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感染症対策

 新型コロナウイルスを受け、感染症対策の体制が問われています。保健所の拡充やCDC設置など、今後どのようにして体制を整備していくのかという点が争点となっています。

 新型コロナウイルス感染症により多くの方が被害を受け、京都府でも650名(2022年3月29日現在)の方が亡くなりました[i]。このことを踏まえ感染症に対する体制のあり方にも注目が集まっています。保健所は感染症対策において地域と医療機関の間の調整などの役割を果たします。コロナ禍では人手不足が問題となりました。国内の保健所は1997年ごろから統廃合や人員削減により減少し続け、1992年に京都府内に23か所あった保健所は現在8か所のみとなっています[ii]。また感染症対策における指揮系統も重要な問題です。例えば米国ではCDCと呼ばれる米国保健福祉省直轄の感染症対策の研究所がコロナ禍でガイドラインの作成など重要な役割を果たしてきました[iii]。政府は2020年3月ごろから日本版CDC設置を検討するとしてきましたが、達成できていません。広島県や東京都などは独自のCDCを設置しており[iv][v]、国の決定を待たずに感染対策方針を考案するという姿勢を取っています。京都府が今後どのような体制を構築するのかについても争点の1つになりそうです。
※アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention、略称:CDC)

子育て

 子育てに関する費用を軽減するために国による児童手当の給付や府による医療費助成が行われていますが、資格要件や上限もあり、その他の費用含めてどのように保障していくのかが問われます。

 子どもを持たない理由として最も多いのが「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」というものです[i]。子育て費用は未就学児・小学生で年間約100万円、中学生で年間約150万円ほどかかります[ii]。国は月額1万円~1万5千円の児童手当支給[iii]や、3歳~5歳までの幼稚園、保育園等利用料の無償化(住民税非課税世帯は0歳~2歳も含む)[iv]などの施策で負担軽減を目指しています。また自治体単位で行われるものとして子ども医療費助成があります。対象の年齢や一部自己負担の有無は自治体によって異なります[v]。京都府では中学卒業まで入院費が公費負担(1医療機関につき月200円の自己負担)、外来は3歳未満は入院と同じ扱いで3歳から中学校卒業までは自己負担金月1500円を超えた額が公費負担になります[vi]。市町村が独自に上乗せ制度を設けている場合もあり、実際の自己負担額は居住地によって異なります。また生活保護や母子家庭など一定の条件を満たす家庭に対する援護制度も府や各市町村によって設けられています[vii]。今回の選挙でも、これらの医療費やその他給食費などの子育て費用負担のあり方についても争点になりそうです。

教育費

 数百万~数千万円にも上る家庭の教育費負担。国や府は授業料とその他諸経費についての負担を軽減するため様々な制度を設けていますが、今後京都府としてはどのような形で負担を軽減するのかが問われます。

 大学卒業までにかかる教育費は全て公立で約800万円、全て私立だと約2200万円に上ります[i]。負担軽減にむけて国や府は様々な制度を設けています。高等学校の授業料に関しては、「高等学校等就学支援金」という、年収等の条件を満たす家庭の授業料が実質無償になる国の制度があります[ii]。授業料以外の諸経費負担軽減としては、生活保護受給等の条件を満たす家計に対する「高校生奨学金給付制度」という制度があります[iii]。京都府が独自に行っているものとして、私立高校に通う生徒の授業料負担を軽減する「あんしん修学支援制度」[iv]や、通学費の一部を補助する「高等学校生徒通学費補助金」があります[v]。コロナ禍においては家計急変世帯の支援も行われました[vi]。
 また大学に関しては、授業料が長年増加傾向にあり[vii]、負担軽減の取組みとして国の「高等教育の修学支援金制度」では、世帯年収や学習意欲等の条件を満たす学生に対し、段階的に入学費減額と授業料減額、給付奨学金による支援が行われています[viii]。
 以上のように教育費負担軽減のために国と府それぞれが様々な支援を行っています。一方で授業料以外の教育費負担や資格要件を満たさない家庭の負担などはいまだ大きく、塾や習い事など学校外活動に関しての経済的格差も現存しています。今回の京都府知事選では、教育費の負担軽減のための取組みも争点の1つになるでしょう。

雇用・賃金

 京都府の非正規雇用者の割合は45.2%と全国でワースト2位の数字です。雇用創出や人材育成などに重点を置いた施策が行われていますが、今後どのように雇用や賃金を安定させていくのかが問われます。

 2019年の、国全体で就業者のうちの非正規雇用労働者が占める割合は38.2%です。この数値は2014年に初めて全就業者に占める非正規雇用労働者の割合が37%を超えて以降、最も高い値となっています。最新の2021年における数値では36.7%となっています「i]。
 国全体で見た時、短期的には非正規雇用労働者の割合は小さくなっていますが、いまだ高い数値であることに変わりありません。
 一方で京都府では、2017年における京都府の非正規雇用労働者の割合は42.5%となっており、この値は沖縄県の44.4%に次ぐ、全国で2番目に悪い数値です「ii]。この結果を受け、京都府では2018年からの4年間で「第4次京都府雇用創出・就業支援計画」の下、府と労働局が一体となって「地域活性化雇用創造プロジェクト」や「京都府正社員転換・待遇改善実現プラン」、「きょうと福祉人材育成認証制度」等の雇用創出から人材確保、定着支援、人材育成に重点を置いた施策を行ってきました。
 以上が近年の労働・雇用関係の京都府の実情です。雇用の現状を踏まえ、今後どのような取り組みがなされるのかという点が今回の選挙においては争点の一つになるでしょう。

中小企業支援

 多くの業種で売上高が減少するなど、新型コロナウイルスは産業に大きな影響を与えました。府は独自に経済活動維持のための施策を行いましたが、いまだ影響は収まりません。今後の支援のあり方が問われます。

 現在、日本国内における全企業のうち中小企業の占める割合は99.7%、全従業者のうち中小企業で働く従業者の占める割合は68.8%となっています。この数値からも中小企業の事業活動が日本の経済の大部分を支えていると言えます。
 2020年以降のコロナウイルスの流行により経済が低迷していますが、その影響は中小企業においても顕著です。製造業や卸売業、飲食業、サービス業などの多くの業種で売上高の前年度同期比でマイナスを記録していることが分かっています「i]。
 上記のような状況に対して国は政府系金融機関による実質無利子・無担保融資の活用や持続化給付金、雇用調整助成金等の資金繰り支援策を講じてきました。
 一方、京都府では、新型コロナウイルス対応緊急資金や伴奏支援型経営改善おうえん資金などの施策を実施してきました。売上高減少率や府内における事業活動の期間などの一定の基準を満たした府内の中小企業に対して、資金面での支援策を行い、経済活動維持を目指してきました「ii]。
 しかし、2022年現在もコロナウイルスの感染拡大は終焉していないのが現状です。今回はコロナ禍における初めての府知事選挙であり、コロナウイルスによる経済活動への影響と企業支援策が今後どのようになっていくのかという部分が争点の一つになるでしょう。

防災

 多発する災害に対する対策が必要となっています。土砂災害警戒区域の対策工事やインフラ施設の改修を早期に行うほか、防災・減災に向けて行政がどのような体制を整えるのかが問われています。

 京都府の土砂災害警戒区域は約17,000箇所となっています(令和4年2月時点)[i]。警戒区域内に避難所、病院等の要配慮者利用施設等があるのは約5,500箇所であり、そのうち対策工事が完了した箇所は約750箇所(約14%)となっており[ii]、土砂災害対策がさらに進められる必要があります。
 災害に備えるため、 道路、河川等のインフラ施設についても保全しておく必要があります。約20年後には、建設後50年以上経過した橋りょうが7割以上となるなど[ii]、インフラの老朽化が急速に進展しています。
 特に河川については、河川延長約1,400kmで改修が必要となっています。そのうち、時間雨量50mmに対応できる河川整備が完了した区間は約500km(約36%)であり[ii]、早期の改修が求められます。
 また、災害に備えるための体制づくりも論点の1つです。2004年、当時の山田府知事は、12の地方振興局を4つの広域振興局に再編しました。それに合わせて、12の土木事務所も4つに統合されました[iii]。この再編は、府民や地域のニーズを的確にとらえ迅速に答えていくことや、専門的な支援機能の充実を図ることが目的とされており、現在もこの体制を継続しています。多発する災害に備えるために、行政がどのような体制を整えるのかも重要です。

文化の継承

 文化庁の京都移転が決定し、京都の文化の継承や、国内外への発信を進めていく上で新しい局面を迎えています。
 地域コミュニティの衰退や後継者不足を抱える中で、文化継承の仕組みの構築が課題となっています。

 京都は伝統や文化が豊富な地域です。京都府内には国宝が234件、重要文化財が2187件と、いずれも全国2位となっており、無形文化財も多数存在します[i]。
 文化庁の京都移転が決定しており[ii]、京都の文化の継承や、国内外への発信を進めていく上で新しい局面を迎えているといえるでしょう。
 一方で、少子・高齢化、過疎化による、地域コミュニティの衰退が指摘されています。京都府の総人口は、2004年の約265万人をピークに減少を続け、2020年では約258万人となっています[iii]。
 年齢3区分別の人口では、年少人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)が減少する一方、老年人口(65歳~)は増加し続けています[iv]。とりわけ、京都府北部地域では少子化と高齢化の影響が大きく、平成17(2005)年から平成27(2015)年までに総人口に占める老年人口の割合は5%増加しています。
 このような状況のなかで、市町村の文化協会加盟団体数や総会員数の減少などの状況がみられています[iv]。
 高齢化や過疎化による地域コミュニティの衰退は、文化財の保存や継承のための負担の増大などのほか、後継者不足を引き起こし、文化継承の仕組みの構築が課題となっています。

エリア開発

 エリア構想の1つである「北山エリア整備計画」では植物園の整備やアリーナ設置などによる活性化が目指されていますが、近隣住民などからは不安の声も上がっており、今後の方針が問われます。

 京都府基本計画には地域の魅力作りや成長・発展を目標としてハード整備とソフト施策を組み合わせた5つの「エリア構想」が記載されています[i]。その中の1つが「北山『文化と憩い』の交流構想」に基づく「北山エリア整備基本計画」です[ii]。府は同エリア内の植物園や府立大学体育館の老朽化、来訪者を引きつける賑わい・交流機能の不足等を課題としています[iii]。計画では植物園の観覧温室の移転等によるサービス向上、府立大学にプロチームを誘致できるような約1万席のアリーナ設置、商業施設の整備、施設間の通路の整備等の方策が提示されています[iv]。計画に対しては賛否両論があります。植物園については観覧温室の移転が植物に影響するリスクや通路整備に伴い生け垣が伐採される可能性が指摘されており、累計10万人以上の見直しを求める署名が提出されています[v]。府は2021年11月に近隣住民に対する説明会を開催したり[vi]、市民団体より提出された公開質問状にするなどしています[vii]が、今後どのような形で進められていくのか明らかになっていません。今後計画をどのように進めていくのか、あるいは取りやめるのかが争点の1つになりそうです。

北陸新幹線

北陸新幹線は小浜から京都駅を通過するルートで計画が進んでいますが沿線の自治体からは懸念の声も上がっています。その他インフラの整備を含め今後どのように進めていくのかが問われます。

 北陸新幹線は東京-大阪間を結ぶ新たな鉄道として、東海道新幹線の代替補完・沿線都市の発達・巨大な都市集積圏域の形成などの機能が期待されています[i]。北陸新幹線とは東京から北陸を経由して大阪に繋がる新幹線のことで、2015年に東京-富山・金沢間が開業しました。金沢以西は敦賀を経由し新大阪に繋がる予定で、現在、金沢-敦賀間の工事が進んでいます。敦賀-新大阪間については小浜から南下して京都駅を通り京田辺市経由で新大阪に至る小浜-京都ルートに決定されています[ii]。これに対し京都市・京都府は一体となって円滑な整備の推進・地元負担の軽減・関西国際空港への延伸に取り組んでいます[iii]。地元負担について、建設費はJRの貸付料を除いた金額を国と新幹線が通る自治体が1:2で負担すると定められていますが、効果が広いエリアに影響することから、市と府は国に対して負担軽減を求めています。また整備新幹線と並行する形で運行する在来線を並行在来線と呼び、負担軽減のため整備新幹線の開通時に同意を得てJRから経営分離されることになっています。これについても国に対して経営分離がされないよう要望が出されています。一方で2021年9月には想定ルート上にある南丹市の西村良平市長が残土の処分問題などを念頭に懸念を表明する[iv]など、賛否がわかれています。

環境

 京都府では、2030年度に2013年度比40%以上の温室効果ガス削減が目指されています。その中で、家庭における温室効果ガスの削減や、府内での多様な再生可能エネルギーの導入が課題となっています。

 2020年に「パリ協定」が始動し、2050年ごろに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることが目指されています。
 京都府においても、関連する条例を改正し、「2050年度に実質ゼロ」と「2030年度に2013年度比40%以上の削減」を明記しました[i]。実現に向けて、省エネ対策や再生可能エネルギーの導入・利用などの取り組みが求められています。
 府内の温室効果ガスの排出量は、省エネ設備への更新等により全体として減少し、1990年度と比べて2017年度は産業部門で44.7%減、運輸部門で19.1%減となっています。その一方で、家庭部門は1.6%増加しています[ii]。家庭部門や業務部門における削減のためには、さらなる取り組みが必要です。
 また、2018年度の府内総電力需要に占める再生可能エネルギー発電量の比率は9.2%です。そのエネルギー発電出力の約9割を太陽光発電が占めており[ii]、太陽光発電以外の多様な再生可能エネルギーの導入が課題となっています。